暫定税率問題の根の深さ
テロ対策特別措置法の話が一段落して(こんな形で一段落にしていいのかどうか疑問が大いにあるのはともかくとして)次の政治の焦点は「ガソリン税等の暫定税率の行方」に移っているようですが…
世論調査などをみていると、7割近い人たちが暫定税率の廃止を求めているのだそうで。
民主党は「3月末で暫定税率の根拠を期限切れに追い込んでガソリン代をリッター25円引き下げる」と息巻いているんだけど、話を聞けば聞くほど本当に世の中そんなにうまくいくのかな…というか、郵貯民営化問題の二の舞になりそうなニオイがぷんぷんしているんだけど。
まず、ガソリン税の暫定税率の根拠がなくなることで確かにガソリンはリッター25円近く下がるということになる…理論上は。
実際問題として、現時点で原油相場の高騰で人件費とかその他諸々のコストを切り詰めに切り詰めて値段設定しているガソリンスタンドにとっては、そう簡単に25円も価格を下げることが出来るのかな…というのが正直なところだし、価格が下がったとしても一時的なものだろうというのはたぶん間違いはなかろうかな、と。
ガソリンの大口需要先であるトラック業界にしても、コスト削減要求が厳しい折、現時点で元々赤字状態なので、すぐに「はい、運賃を値下げします」ということにはならないでしょうなぁ。
で、もう一つの問題として「誰がガソリン税(と暫定税率上乗せ分)を払っているのか」ということ。
これはガソリンを買っている人、すなわち日常的に車に乗っている人たち、なわけです。
正直、都会で暮らして普段車なんか乗らない人たちは全く払っていないわけですよ。
ちなみに暫定税率がかかっているのはあくまでも「揮発油」関係のみ。だから、元々揮発油税のかかっていない灯油の価格は安くならないし、これが廃止になってもガソリン以外の物価上昇の歯止めには直接的にはつなりにくいのかな、と。
あと、根本的な問題は「暫定税率廃止による減税分は何で補填するのか、しないのか」という具体的提案が全く見えてこないこと。この際はっきり言ってしまえば、おそらく「補填しなくたって道路整備のペースが落ちるだけでどうにかなるさ」ぐらいにしか考えていないんだろうけど、ことはそんなに簡単じゃないですぜ。
一番大きいのは、ガソリン税をはじめとする道路特定財源は「国税」、すなわち国に入っていくお金だということ。国税の収入が落ちると、国税の収入減を補うために歳出を減らさなきゃいけないんだけど、こういうケースでまず手をつけるのが「国庫補助金」と「地方交付税交付金」、すなわち地方に振り向けるお金をまずどかんと減らすというのは三位一体の改革ですでに明らかなとおり。となると、ガソリン代が減る減税の恩恵以上に地方の財政を圧迫する状況が発生しかねないんじゃないかという危惧をどのくらいの人が把握しているんだろうか、と。
さらに根が深いのは、この根拠法である「租税特別措置法」の日切れで巻き込まれる特別措置の範囲に多くの人が気づいていない(というかほとんど報じられていない)こと。
このあたりは産経新聞の記事に詳しいんだけど、関税の上昇などで物価の上昇の見込まれる案件も多くて、一筋縄ではいかないのかな、と(法案を是々非々で個別に審議してくれれば委員だろうけど、そうはいかないでしょうなぁ)。
ま、いずれにしましても、このあたりの正確な背景も含めて、表面的な情緒だけで流されて世論を誘導し、郵政解散のあとみたいに「こんなはずでは…」にならないことを祈るばかりですけどなぁ…はぁ…
« 岩国市庁舎問題について「サンデーモーニング」をご覧になった方へ(内容の訂正) | トップページ | 続・暫定税率を考える »
この記事へのコメントは終了しました。
« 岩国市庁舎問題について「サンデーモーニング」をご覧になった方へ(内容の訂正) | トップページ | 続・暫定税率を考える »
コメント