衆議院が解散して…
というわけで、郵政民営化法案の参議院本会議での否決を受けて衆議院が解散したわけですが。
それにしても、参議院での否決はなんとなく見えていたような部分がありましたけど(元々衆議院よりも与野党の議席差が接近していたというのもありますし)、17票差というのは思ったよりも大差になったなという気はしますね。
もちろん、これらの中には、純粋に民営化に反対というのもあるでしょうし、あるいは法案に反対、さらには法案の審議過程や、小泉首相の政治手法そのものに反対というのもあるんでしょうけどね。
ところでこの解散、最初のとっかかりの部分でハプニング的に語られることが多いみたいですけど(参議院で否決されたのに衆議院を解散とか)冷静に考えれば考えるほど、起こるべくして起こった解散…というか、小泉首相は解散に打って出るしかなかったような気がしてならないんですよね。
というのも、そもそもは小泉首相は「党内での支持基盤」以上に「国民の(ブーム的な)支持」をバックボーンにして首相になった人ですから、自分の遂行しようとする施策、とりわけ一連の構造改革に関しては党が大反対しても「国民はこれを望んでいる」との信念(というと多少言い過ぎかもしれませんが)に基づいて強硬姿勢を打ち出してきたところなんですよね。(本当はかなりの部分を丸投げしていたのも事実ですが)
ところが、自分が本当に一番やりたかった郵政民営化に関しては国民の関心がさほど高くならない。
実は年金やら外交やら課題が山積にもかかわらず、「構造改革の総本山」とのキャッチフレーズとともにすべてに優先して議論を進めようとして注目を集めようとしても、政治生命をかけてまでリーダーシップを発揮しても、やっぱり国民の関心が高くならない。
であれば、考えられる手は2つしかないのだろうと思うわけですよ。
(1)多少強引にでも法案を通して、とりあえず「郵政民営化する」という道筋だけはつけてしまう。
(2)法案が通らなかったら、「反対者は抵抗勢力」とおきまりのフレーズを出して、郵政民営化を国民に問う=解散総選挙に打って出る
で、結果的に(2)を選択したのだろうという訳なんだろうと思うんですよね。
ただ、ここで小泉首相は2つほど見込み違いをしている可能性が高いんですよね。
一つは、郵政民営化が選挙の主たる争点とならない可能性がかなりあるということ。
首相は事あるごとに「これは郵政民営化解散だ」「自公で過半数をとったら再度法案を提出する」などと息巻いていますし、造反議員を公認しない方針を打ち出して、何とか郵政民営化を選挙の主たる争点にしようと躍起になっていますけど、政権奪取の最大のチャンスと見込んでいる民主党はたぶんこの挑発に乗ってこない可能性が高いんですよね。
確かに、民主党は労働組合を大きな支持基盤にしていたりしてこの点に乗ってこれないという面も否定できないですけど、そもそも国民が郵政民営化にあまり関心が高くなかったのは、もっと重要度が高いと認識している年金だとか外交だとか景気対策だとかを郵政民営化のために後回しにしているからという側面が強くて、たぶん民主党がついてくるのはそのあたりになるんだろうと推測されるからなんですよね。
加えて、郵政のことを表に出さないことで、自民党の支持基盤でもある「特定郵便局長会」からの造反を引き込める可能性もあると踏んでいる節もなんとなく伺えるのもあるんですよね…
もう一つは、造反議員を公認しない、追加公認もしないという方針が裏目に出る可能性をはらんでいると言うこと。
そもそも郵政民営化に反対している議員というのは地方部の議員が多くて(そりゃあ、実情からすれば合理化の真っ先の標的にされるのは地方部の郵便局でしょうから)、なおかついわゆる「地盤」が強固だと言われている人たちばかりなんですよね。
自民党執行部は対抗馬をたてるという方針のようですけど、逆に造反議員に返り討ちに遭う可能性がかなりありますし、対抗馬と共倒れになる可能性も高いと思われるんですよね。(小池環境大臣が立候補予定らしい東京10区なんか、その典型になりそうな予感がぷんぷんしていますけど) だとすると、結果的に民主党に漁夫の利を与えてしまうだけのような気もするわけでして…
ま、どうなるかは9/11になってみないとわからないというのが正直なところなんでしょうけどね。
【補足】
以前の記事もご参考までにご覧くださいませ。
なお、郵政民営化そのものに関する論評はまた別の項で行いたいと思っています。
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