最近のトラックバック

2013年12月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

このブログについて

« 列車脱線事故に見る、必要とされる情報の密度 | トップページ | JR脱線事故の背景を私的に解読する(ハード編) »

2005/05/04

ドラマ的取材報道手法を憂う

前回のエントリ(記事)以降今日に至るまで、民放のテレビは相変わらずJR西日本での脱線事故報道を毎日のようにトップ扱いで伝えています。(NHKは徐々に他のニュースとのバランスを考えて報道する姿勢にシフトしているようですが)
死者数が106人で確定し、事故調査委員会の調査などで事故のアウトラインが徐々にわかってくるにつれて、テレビをはじめとするメディアの攻撃(と、はっきり書いてしまいますが)の矛先は組織としてのJR西日本に向けられているようです。

事故の様々な要因の一端…私は要因の「すべて」ではないと思っています…となったJR西日本の内的問題を論ずるのは今回は横に置いておくとして(今の段階で敢えて簡単に言えば、国鉄がJRになる前後で抱えていた問題が引き金の一端になったのはあるだろうし、組織的な問題を論ずるならば、JR西日本あるいはその他のJRをはじめとする鉄道事業者だけの問題ではないといえると思います。いずれ詳しく書きますが)その後の酷いまでの取材報道ぶりをみるにつけ、正直「見る気が失せる」くらい酷い内容の伝えられ方が続いているのを見て、だんだんいやになってくるくらいです。

マスコミが結論ありきの報道を続けているというのはこの場でも以前から何度も繰り返し触れている(あるいは他の方々のエントリでも数多く触れられている)ところですけれども、今回の事故でも


  • 「事故の犠牲となった人たちの家族にとってはJR西日本は終生恨むべき存在となっている」

  • 「今回の事故のすべての原因はJR西日本の組織のあり方にある」

  • 「従ってJR西日本を組織解体的に根本的に改革しなければならない」


という先入観に基づく仮定=結論によって取材しているのがあまりにも見え見えなんですよね。

そうでなければ、例えば遺族の家に上がり込んで、JR西日本の社長が土下座して謝罪する中を遺族が罵声を浴びせる姿を遺族の後ろから一部始終を撮影してその模様を繰り返し放送したり、あるいは献花台で対応する社員に対して髪を引っ張るなどして一方的につるし上げる遺族の様子を別に止めるでもなくカメラを回して一部始終を放送したりなんてことは、ちょっとおかしいんじゃねぇか?と思わずにはいられないんですよ、正直な感想として。(注:つるし上げていた人物は、遺族ではなく「被害者の関係者」だったそうです)
かつての「川口浩探検隊」ではないけれども、かえって演出っぽく見えてしまって、前後の段取り作りのことを想像するに非常に不愉快且つ腹立たしい思いになってしまったのですけどねぇ。

あと、伝え方が非常に場当たり的な印象が否めないんですよ。
確かに、例えば事故の原因に関する事実が断片的にしかわからないというのもあるのかもしれませんけど、例えば列車が浮き上がって傾いた末にマンションにつっこんだとか、事故後の現場のレールがゆがんでいたとか、全体を見てそのことを伝えればいいものを、その都度その点だけを重箱の隅をつつくかのごとくクローズアップして伝えることがあまりにも多くて、全体の(メカニズム的な)本質が見失われがち、あるいはそもそもそういった事故の全体像なんてほとんど何も考えていない(あるいはどうでもいいと思っている)んじゃないかと思わせるような報道があまりにも多いんですよね。

それから、JRの体質的なものを問う報道も多いんですけど、伝え方があまりにも攻撃的且つ一方的だな、と。それこそ、数年前の雪印のニューズのリプレイを見ているんじゃないかと思ってしまいそうになるくらい。
例えば「たまたま同じ列車に居合わせた運転士が事故報告したのに救護を指示せず通常出勤を促した」とか、今日伝わってきた「事故当日に本社とは別の部署で福利厚生のためのボウリング大会をやっていた」だとか、そういった冷静な見方をすれば解釈の分かれそうな事柄や、ある意味非常に些細ともとれることを組織として大問題だと伝えてみたりして、視聴者の怒りを不必要に増幅させようとする根性が非常に頭に来るんですよね。

だいたい、会社の組織論を語れるほどマスコミの組織は盤石で万全ですべての事柄に於いて問題が何もないのか?と聞きたくなってしまうことしきりだし、そもそもそういったことに問題があると思うんだったら、何で事故の前にわかる部分だけでももっと追求をしていなかったのか?と。
あまりにも問題点の追及ぶりが後付けというか「この際あれもこれも」的というか…
問題があってもネタにならないと思ったらほおって於いて、問題が起こって攻めるときは徹底的に攻める…って、そういうのをジャーナリズムっていうのかねぇ、って思ってしまうんですけれども。

こうやって考えてみると、何というか、報道の作りが「ドラマ」のそれに見えてしまってしょうがないことが多々あるんですよ。事故そのものというより、被害者の人間模様だとか、事故の背景にあるものだとかをことさら強調して、事故を起こした企業を社会的に成敗すれば一件落着…みたいな、ねぇ。
まあ、そうやって考えれば、視聴者の興味も引けて、視聴率もとれてなにより…みたいに考えていたとしたら合点はいく話ではあるんですが。(当然合点がいくことと納得できるということは全く別個です)

もちろん、これが個人的妄想であってほしいと願うばかりなんですけどね。はぁ…

【追記】
関連しそうな過去のエントリを掲載しておきます。よろしかったらご一読ください。
列車脱線事故に見る、必要とされる情報の密度
ニュース・エンターテイメント
発言・意見の「トリミング」
「メディア企業」か「報道機関」か(続・ライブドアの「戦略」)
マスメディアの「相対的優位」

【補足:5/5】
ボウリング大会の件について少々フォローしておくと、組織(会社)全体としての緊張感が欠けていたという側面は否定できないのは確かだろうと思うんです。ただ、報道の仕方として「おまえら会社としての犯罪なんだから、何でもかんでも自粛しやがれ」的な報道の仕方がどうなんだろうかと思うわけなんですよ。
雪印の事件の時は、社長が囲んだ記者に対して「私だって寝ていないんだ」と喋ったことが記者たちに火をつけた格好になっていますけど、今回の事故の場合記者たちがあちこちで燃料を探しているとしか思えない取材ぶりのような気がしてならないんですよね。JRは毎日のようにきちんと記者会見を開いていますし、出来る限り誠実に対応しているように見えるにもかかわらず、隠蔽体質とか組織ぐるみ犯罪的な見方を強調して報道しているのが何とも…
※最初の掲載以降、誤字脱字の訂正や、部分的な表現の修正・リンクの追加を行っていたりします。

« 列車脱線事故に見る、必要とされる情報の密度 | トップページ | JR脱線事故の背景を私的に解読する(ハード編) »

コメント

はじめまして。記事を読ませていただきました。そうですね、雪印の事件もありましたね。ぼくは、先日の日本航空関連の報道、むかしの三菱自動車に対する攻撃を想いだしました。特にイラクから帰ってきた人質になった3人の事件も想いだしました。誰かをターゲットにして一方的につるし上げる。自分のことは棚に上げて安全圏に避難し、一方的に断定し断罪する。これはいじめ社会だと思います。また読みに来させてくださいね。

>三平太様:
コメントありがとうございます。
確かに、三菱自動車の件とか日航の件とかもありましたが、これらとすぐに結びつかなかったのは、JR西日本は今の段階で明らかになった範囲では「基本的に(業務上過失致死以上の)法令違反をしていない」という点なんですよね。つまりは、あくまでも「道義的責任」に過ぎない、と。
道義的責任を問うのはある種社会の責務かもしれませんけど、それをマスコミが率先して(しかもいじめを想起させるほど過剰なまでに)行うことに非常に違和感を感じているんです。
よろしかったら他の記事も是非お読みください。

ご無沙汰しております。先ほどトラックバックさせていただきました。極力、煽られたマスコミ批判にならないように書いたのですが・・。
またブログに関しては教えていただきたいこともありますので機会があればアドバイスくださいませ。

>マイルス様:
こちらこそご無沙汰しております。一瞬わからなかったのですが、私も相変わらず楽器は続けております。
ブログ拝見しましたが、なんていうか、私以上にバランスの整った記事のような気がします。
又トラックバックさせていただく機会もあろうかと思いますが、よろしくお願いします。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/15366/3983141

この記事へのトラックバック一覧です: ドラマ的取材報道手法を憂う:

» あら探しがマスコミの仕事か? [かきなぐりプレス]
運転士が現場を離れた次はボーリング大会か! いつまでJR西日本を叩き続けたら気が済むんだ。ここまでくると逆にマスコミの報道姿勢に疑問を感じる。まるで、キャンペーンを張っているかのようだ。 運転士逃走報道に続く、特ダネ級のあら探しに躍起になっている、としか思えない。 事件当日、天王寺車掌区の職員43人が予定していたボーリング大会を予定通り開いた、ということで叩いているわけだ。 「同社の人命や安全に対するモラルが問われる事態に発展しそうだ」とマスコミがたきつけて発展しそうだ、とは... [続きを読む]

» JR福知山線事故(2)…マスコミ,おかしくないか? [D.D.のたわごと]
25日のJR福知山線塚口・尼崎間の脱線・衝突事故から10年。 JR西日本が抱えてきた闇の部分が次々とあらわになってなってきていますが, 連休中の今朝のテレビ各局の報道を見ていると, 報道する側も感情的・扇情的な方向に偏ってきているように見え, 逆に醒めてしまうところがありました。 ◆今,この事故で“旬”な話題は次の3つ。 (1) 衝突電車に乗り合わせたJR職員が救援活動をせず出勤した件 (2) 事故当日,天王寺管区�... [続きを読む]

» マスコミの功罪 [Goemon's place blog(日々徒然たるもの)]
JR福知山線脱線事故、この最初の報道で車との衝突が原因ではないか?という報道から [続きを読む]

» 敢えて勤務復帰した運転士を弁護する [やの日記]
■定時性が保たれなければ給料減額なんだろ?<尼崎脱線事故>事故車乗車の運転士2人、救助活動せず出社「乗客」の運転士2人、救助作業せず出社 JR脱線事故>出勤後、2人とも通常の点呼を受け、予定通り運転業務に就いていた。あの大事故に遭遇しながら、職務をまっとうした。まったく... [続きを読む]

» テレビを見るのは精神衛生上よくない [日々不穏なり]
GWも終盤。今日は家でゆっくりとしていたのですが、 なんといいますか、テレビを見ると腹立ちますね。テレビでの 番組制作者・報道担当者の劣化は、もう取り返しのつかないレベルまで きてしまっている気がします。日本にも、きっちりとしたニュース専門 チャンネルが欲... [続きを読む]

» マスコミによる人身御供 -- JR福知山線脱線事故 [三平太の「愛をとりもどせ」]
日本のマスコミの大衆操作には以前から頭にきていたが、今日は一言いわせてもらう。福知山線関連の報道で僕はかなり憤っている。今日の論点は二つ。一つはマスコミによる特定の会社たたき。もう一つは事故の延長で今回行われているJR批判の内容だ。今日は時間があまりないので「マスコミ」とひと括りにすることには違和感を覚えるが、簡潔に述べる。 一つはまずマスコミの会社たたき。この手のマスコミの煽り体質については、いい加減頭にきている。今回のJRの事故では、事故原因の特定すらできていないのに、JR絡みの小さな問題... [続きを読む]

» 福知山線で列車事故(追記あり) [ガ島通信]
追記(5月2日)事故発生から1週間が過ぎました。最も責任が重いのはJRであることは確かです。原因がどのようなものであれ、100人以上が死亡する事故を起こしてしまった以上、経営陣が責任を取らなければ、だれが責任をとるのかと思います。三菱、JALもトップがかわって... [続きを読む]

» 尼崎電車事故&ボーリングに対する馬鹿マスコミの対応 [1喝たぬき]
尼崎電車事故の際、JR西日本の社員が年休を取ってボーリングやらゴルフを楽しんでいたという。 [続きを読む]

» JR事故の報道に関する心配事!! [『リセットマネジメント』一直線! マイルスの目指せWinWin関係]
JR事故に関する最近のマスコミ報道には、少しイヤな気持ちにさせられる。もちろん、 [続きを読む]

» ■JR西日本報道:マスコミは神様?■ [世の中不思議で面白い]
JR西日本の報道は益々加熱しています。事故の悲惨さや亡くなられた方の無念。通勤・通学で我々一般市民が身近に利用する電車で起きた事故であることなどを考えると、この事故の報道によりその他の事故報道が片隅に追いやられてしまったことは別として、マスメディアによる大量報道は理解できるところではあります。 今回の事故は、'''天災ではなく人災'''であり、明らかになってきている事実によれば、'''被害者側に瑕疵は全くないこと、全て..... [続きを読む]

» マスコミのお仕事 [竹林]
最近のマスコミの取材・報道の方法に対し色々な意見があるようですが、実はマスコミというのは、ニュース=新しいできごと報道=ニュースなどを知らせること.マスコミ(ュニケーション)=新聞などの情報の大衆への大量伝達マスメディア=マスコミの媒体(新聞・放送など)(三省堂より)であり... [続きを読む]

» 尼崎脱線事故 2 [bitter tears...]
脱線事故や不祥事をいいことに モラルの欠片もない取材・報道がされている。 「人が死んでんねんで!」 社長や安全推進部長を吊し上げる記者。 「今はただ死にたいです」 生き残った唯一の証人である松下車掌の入院先まで追いかけてって 取材をした文藝春秋。 警察、会社の尋問続きで、ついに体調を崩して入院した人間に、さらに取材して そこまでして追い込みたいのか、と思う。 誘導尋問も度が過ぎないか。 「JR脱線事故、一番悪いのは誰だ」 だと? お前等じゃないの... [続きを読む]

« 列車脱線事故に見る、必要とされる情報の密度 | トップページ | JR脱線事故の背景を私的に解読する(ハード編) »