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2005/05/07

JR脱線事故の背景を私的に解読する(ソフト編)

さて、今度はソフトの面、すなわち企業としてのJR西日本について。
(ハード面、すなわちメカニズム的な事故の側面については前の記事をご覧くださいませ)

今回の件で、マスコミ報道ではJR西日本の企業体質に大いに問題ありなどと書き連ねていますが、原因の一つ一つを見ていくと、本当にJR西日本だけの話?と疑問を抱くことが大いに感じているところです。

まず、ダイヤが相当に窮屈だったことが運転士に過度のプレッシャーを与えていたのではないかという意見がかなり聞かれます。
良く言われているのが、ダイヤ改正で宝塚~尼崎間で停車駅が1駅増えたにもかかわらず、所要時間が変化していないのはダイヤ設定にかなり無理があるのではないかという話。オーバーランや遅れを生じさせた場合にいわゆる「日勤教育」を行ってプレッシャーをかけ続けたという報道がされています。
基本的に、列車の設定ダイヤには何らかの余裕時分というのが設けてあるはずで、(事実上)1分切りつめたというのは、直線区間での速度向上とこういった余裕時分の一部省略に由来しているのでしょう。(正直な話、この部分については推測の域を出ませんが)
もちろん、こういった部分が社員(特に運転業務に携わる運転士や車掌)にプレッシャーを与えていたという点は一理あるんですが、こういった社員へのプレッシャーの与え方がJR西日本固有の問題かというとそうでもないような気がします。
実感として不景気の状態が長く続く中で、労働環境が過酷さを増しているのは何もJR西日本に限った事ではないだろうと思います。収益確保のために一人あたりの売り上げのノルマは増す一方で、労働環境はいっこうに改善されず、ノルマを達成できなかったり、逆にミスをすれば懲罰同然の報いを受けてしまう。さらには、こういった状況に不平を申し立てようものなら「ほかに代わりはいるんだよ」とばかりに解雇の遠因につながってしまう…といった悪循環の繰り返し。
こういった悪循環が(安全面を問われる事のある)運輸産業でも決して例外ではなかった…という事だけなんではないかと考えています。
今回、国の指導のもと、各鉄道事業者の都市部ダイヤの総点検作業が行われるそうですけど、いわゆる抜け駆け(点検結果のごまかしなど)がないようにきちんと点検を行った上で、余裕を持ったダイヤ設定をお願いしたいところです。同時に、できればほかの産業でも、今回の事故を他山の石として、従業員に安全性を軽視した過度のノルマを課していないか、きちんとチェックをしてほしいと思うんですが…なかなか難しいとは思うんですけどね。

次に、最近になってやっとぼちぼち報道されるようになった(R30さんなどは以前から指摘していたようですが)JR西日本の社員(特に運転従事者)のいびつな職員構成。本来であれば中堅どころとなるべき30代の職員が皆無に近く、JRになってから採用された20代の若手と、40代以上のベテランしかいないという状況にあります。
実はこれはJR西日本に限った話ではなくて、ほかのJRでも似たような状況だと聞きます。
こういった状況になった原因ですが、国鉄→JRの分割民営化の際にいわゆる「国労つぶし」が行われた事と、そもそも旧国鉄末期に合理化のために採用を控えていたためではないかという意見が聞かれます。どちらも遠因としてあるでしょう。ただ、国鉄がJRに民営移管された際に、何年かたてばこういう状況になる事は想像が付かなかったのかなと、この点では心配になります。
マスコミの一部にはこういった状況が上層部への権力の集中につながり腐敗を生んだという見方も行われていますけど、赤字体質を改善し急速に業績を上げようと思ったら(ライブドアではないですが)上層部の速やかな経営判断が求められるわけで、ある程度は仕方がない部分もあるでしょう。もしこの点を追及するのだとすれば、(事故の起こってしまった)今ではなく、分割民営化直後にもっとなされるべきだったのではないか、と。
「国労つぶし」については単なる労使問題として単発的に取り扱うメディアはありましたけど、こういった後に続く影響まで踏み込んだ報道をする媒体を目にする事がなかったのが非常に悔やまれるところです。

企業体質については、上層部の首を替えれば済むという問題ではないという事は以前から繰り返しいっていますけど、相変わらず「まずトップの首を切るのが先だろう」としか考えていない浅はかなマスコミが多いのが情けなくなります。
むしろ、一次的な改善の方向性を見いだしてから(事故後すぐでは決してない)経営責任者が交代し、一連の方向性として改革を進めていくのが本筋だろうと考えています。
『鉄道事業者は収益よりも安全だ』などとアホのように繰り返しているメディア関係者もいるようですが、民営企業である以上は何らかの収益を確保しなければいけないのも事実で(それこそ、マスコミが自分たちの視聴率だとか売り上げだとかの為に、事実報道よりも感情的な部分だけをクローズアップして報道しているように)マスコミの感情的な報道に流されずに、バランスを考えた安全対策を進めてほしいと思います。

【補足】
案の定というか、ボウリングにとどまらず、事故後ゴルフに行ったとか旅行に行ったとかでJR西日本をたたきまくっているマスコミがあちこちで見受けられますけど、私的な休暇を否定したり、主催旅行の随行行為(JRは旅行業も持っていますから、当然社員以外のお客さんもいるはずです)まで否定する論調にはもう辟易しますな。
そこまでしてJR西日本をつぶしたいのか、マスコミは、と…

【追記:5/10】
JR西日本の運転職(おそらく現業職のことでしょう)で採用試験受験者のうち25%が受験を辞退したとの報道
就職難のこの時期にものすごく高い数字にも思えそうですけど、所詮は去年でも2割少々は受験辞退していたのだから、何もそんなに大々的に報道しなくてもと思うのですけど、やっぱりJRの印象を悪くしたということを印象づけたいのでしょうね…

【再追記:5/11】
産経新聞の5/7付朝刊紙面に、今回の事故報道の異常ぶりを伝える記事がありました。
せめてもの救いになるとは思うのですけど、敢えていえば、このことが「一部の特定の報道機関の暴走」と「JRの隠蔽体質がそもそも」的な他人事報道だったのを考えれば、やっぱり悲しくなるのですけどね…

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